お気軽にご相談ください。
10.jpg

事務所通信Vol.5 part2(2010年6月)

■今月の気づき

  ・いつになく厳しかったにも関わらず、今年の会計監査が見事にうまく行ったわけ


◆毎年問題だらけの『会計監査』というもの 

「えっ、冗談でしょう?そんなこと急に言われてもどう考えても無理ですよ。」と居並ぶ公認会計士10人のほとんどが口を揃えて途方に暮れる事態。 

今年4月下旬の某上場企業本社会議室の一場面です。この日はこの会社の平成22年3月期決算の会計監査の初日で、私を含めて公認会計士13人が顔を揃え、これから約1カ月に渡る作業の打合せをしていました。 

いったい何が起きたのかを説明する前に、私が税務顧問・経営コンサルティングの合間に関わるこの『会計監査』という仕事のことを少しご説明しましょう。 

会計監査を一言で言いますと、会社の決算書に間違いや不正、いわゆる粉飾(ふんしょく)が含まれてないことを調べて、「この決算書は信用しても大丈夫」という太鼓判を押す仕事です。 

私も金融業の某上場企業の会計監査を担っておりまして、例年4月下旬からゴールデンウィークを挟んで約1ヵ月間神経をすり減らすこの作業に没頭することになります。 

そしてこれも例年のことですが、会計監査の現場では毎年毎年必ず何らかの難しい問題が降りかかるのですが、今回はまた特に強烈なことが起きたというわけです。 

 

◆今回はこのままではかなりまずいことになる予感!

初日の打合せで、監査チームの最高責任者A先生の口から出た言葉にそこにいたメンバー全員が茫然としました。

「グループ企業の中で、一番ボリュームあるA商事の担当責任者はSさんだけど、Sさんは別件で当面別のところにいかなければならなくなったから、A商事の分は皆で手分けしてやってくれ。それではA商事の売上関係はW山さん、固定資産関係は赤沼さん、有価証券関係は・・・」

A商事というのはこの企業グループでも中心になる大会社で、売上高数百億円以上、金融庁その他からの監視の目も厳しい特殊な事業を営む会社であり、他の会社のように初めて担当してすぐできるような類の会社ではありませんでした。

通常私たちは現場に入る前に、担当の会社の特徴・注意点・今までの経緯を確認して、準備に準備を重ねてから仕事に着手することで、やっと責任ある仕事が全うできるものです。それで皆の口から冒頭のような言葉が出たというわけです。

 また私たちが会計監査をする対象の上場企業は中心になるホールティングカンパニーと日本国内外の子会社10数社から構成される連結グループになっています。

これらの子会社一つ一つが正しい決算をしているかどうか、さらにグループ各社を連結してあたかもグループ全体が一つの会社であるかのように作成した連結財務諸表が正しくできているかをチェックします。

 しかし構成する各社も大きいところでは売上数百億円のA商事のようなところもあれば、売上5億円以下の会社やほとんど売上のない特殊な会社や中国で不動産投資をする会社もあれば、投資事業組合のような組織もあり、ドル建ての会社、中国元建ての会社があったりと実に様々です。

 これらを10数人の監査チームのメンバーが一番効率的効果的に作業できるように分担の範囲や必要日数をこと細かに検討して準備をしているのです。

 それでもいつもぎりぎりのスケジュールで作業をしていたところを、今回のように直前で大幅に変更するのですから、かなりの無理を強いるのは誰の目にも明らかです。心配なのは無理に無理を重ねて重大な誤りを見逃したり、期日に間に合わないといった大問題が生じかねないことでした。

◆ただでさえきつい分担に不安いっぱい!

実は私は元々この企業グループの中でも三番目の大きさでグループ各社に業務サービスを提供している会社と小さいながらグループ内では最優等生の子会社を担当しています。

実はこの業務サービス子会社は、グループ内では若干ワケありの会社です。言ってみればどうしてもグループ内のしわ寄せがここに集まりがちなのです。ですから毎年新しい想定外の問題が期限ぎりぎりで見つかり紛糾するのが常です。そこで私は何か問題が見つかることを想定して、あらかじめ追加作業が増えてもいいように、いざとなれば削っても良い作業をいつも見定めておいて余裕時間を確保するようにしていました。

さらに言えば今年は過去から積み重なってきた問題点のフォローアップも大きな課題でした。

またもう一つの担当する会社は、まさに私が現場監督をしており一切合切を取り仕切ります。会社側との折衝や監査法人内部での折衝をするのに加え、最終日には監査法人組織として決算承認して良いかどうかを決める審査会という山場を迎えるのに備え、膨大な書類を作らなければなりませんでした。

昨年まではこの会社の経理担当者が非常に優秀でしたので、スムーズに進行しましたが、今回はその担当者が相次いで決算直前に退職してしまい、経理が初めてだという新担当者と一緒に乗り越えなければなりません。

ともかく泣いても笑っても避けては通れない、今まで体験した中で最も厳しい会計監査がスタートしたのです。

◆終ってみれば想像できなかった結果に驚く

そして約1ヶ月後の5月中旬会計監査の最終日夜10時、監査法人内の審査会が終了して監査法人のビルから出て来た時、1ヶ月前の予想に反して、やり終えたという達成感と適度な疲労感がないまぜになった何とも言えない充実感に浸ることができました。

結局のところ終ってみれば、例年にないほどに満足行く結果が得られたのです。

でも初日に役割分担の範囲が大幅に増える旨を宣告された際は、どのように切り盛りすれば良いか一瞬途方にくれたのを皮切りに、その後予想どおり、いいえ予想以上に大小様々な問題が噴出しました。

それは避けようのないものもあれば、明らかに私自身の小さな不手際・些細なミスによって引き起こしたものもあり、私自身は「しまった」と気が気でない場面に少なからず遭遇しました。

しかし結果的にすべての問題が不思議にスムーズに解決されたり、私が「しまった」と思ったことも、大半が取り越し苦労であるなど、ともかく無事切り抜けることができたのには驚くばかりでした。

◆振り返ると偶然・予想外のことがすべていい方向に

 例えば私の担当する会社で案の定、いわゆる想定外の問題が見つかりました。私たちも立場上これを放っておくわけにはいかないような問題です。

昨年までだとこんな場合には会社側の経理担当者レベルにいくらプッシュしても、にっちもさっちも行かず、結局最終期限間際にやっと会社側と会計士側とのトップ会談によって決着するというのが常でした。

 それが今回は問題が見つかったのも早かったですし、会計士側のトップの先生が珍しくずっと現場にいてくださったおかげで、早めにプッシュして決着をつけることができました。(感謝)

 また私が現場監督をしている優等生会社の方でも、ピンチと言える異変が起きました。ベテラン経理担当者二人が決算直前の1・3月に相次いで退職し、経理に不慣れな管理部長と新担当者に今回の決算をしていただくことになりました。

彼らが作成した決算書データを信用して、親会社は着々と連結決算作業を進めていましたが、私がここの中味をあらためてみたところ、案の定数字があちこちおかしいところが見つかりました。すぐに親会社の作業を一旦止めて、もう一度手直しさせたりするなど、そこの会社と親会社との間で目配りすることになりました。内心はらはらどきどきものです。

ただし幸いその時のたった一度の手直しだけで済みましたので、予想外にここの不慣れな経理担当者たちが頑張ってくれたと言えます。(感謝)

監査最終日の夜、監査法人内部の審査会でのこと、あれだけ注意し気を配って作成した審査用書類であったにも関わらず、審査委員に書類の不足を指摘されてしまいました。

4つの書類や資料を新たに作成して添付しろというのです。私のチームのA先生が「そんな細かいこと言うなんて、この審査委員はどうかしてるな」と声を荒げましたが、それも今日中に審査が完了しないとクライアントに会わせる顔がないという切羽詰まった思いだということが理解できました。

この時素晴らしい偶然が起きたのです。持参する予定のないファイルをたまたま持っていたおかげで、審査委員に求められた資料をすぐ用意できたのです。また他の書類を作るのに必要なデータも幸いインターネットにつなぐと簡単に調べることができました。A先生が声を荒げていた時には「もう追加の書類は全部出来上がりましから、大丈夫ですよ。」と言う余裕を持つことさえできていました。(感謝)

また会社の管理部長に私がPDFファイルで送った重要書類があったのですが、そこにスキャンした際の余計な線が入っていたことにだいぶ後で気付き、真っ青になって綺麗なものを送り直すということがありました。

これも幸いこの管理部長が余計な線が入っていることに気づき、以前に私が送ってあった同様の書類データを使って修正していたので、事なきを得たということがありました。すっかり忘れていたのですが、偶然にも以前に私がその書類のデータを渡していたことに驚きました。

またその管理部長は若干対応が遅いことから、いつも少し不安に思っていましたが、今回はその管理部長の仕事の慎重さに救われてしまいました。(感謝)

他にも毎度のことながら思い通りにいかない事態は多々ありましたが、すべて完全にクリアです。

結局のところ監査のスタート時には、不安いっぱいであったのが、終ってみればいつになく素晴らしい出来栄えで完了できたのです。しかし最初に不安を覚えたのも当然のような、無理を通さなければならない難しさ、大小のトラブル連発、想定外のミスが生じたりして、実際には最後の最後まで気を抜く間など無く神経は張り詰めたまま、内心はらはらし通しだったことは言うまでもありません。しかしその間多くの幸運に助けられたという想いが強くしています。

◆他人の分も引き受け、全部自分が責任を取る!

今回の勝因は一体なんだったのだろうかと思うに、それは「自分がやるしかない。最後までやり切るしかない。通常ならば自分の責任だとは言われないことも含めて、最終的な結果について全部自分で責任を負う覚悟で徹底的に全力を尽くす」と最初に心に決めたことではないかと考えています。そうしたら偶然と思えることがことごとく良い方向に転んで助けてくれたというわけです。

以前であれば「自分のやるべきことはもちろんきちんとやる。しかし自分一人がどれだけ頑張っても他人が関わる部分もあるし、結果すべてに責任を負うのはどだい無理だ。」と今から較べるとどこか逃げ腰、いざとなると他に責任転嫁する気持ちが見え隠れしていた気がします。

もちろん他人の目に映る仕事の完成度は昨年も今年も変わらず、しっかりできています。しかし他人の目には見えない違いは、やってる私自身が一番よくわかります。きっとこの一年の間にたくさんの方とたくさんの体験をさせていただく中で、多くの刺激や教えをいただいたことが今回結実したのでしょう。

経営者であれば社員がやった仕事について最終的な結果に責任を負い、言いわけしない覚悟が要ることと、トラブルや困難は犬と同じで逃げると追いかけてくると言いますが、まさにそれを実感した1ヵ月でした。              

 (文責:赤沼)